未来をみる〜火葬の日の夜〜
火葬をした日の夜、ある出来事があった。
仲良しの大学時代の先輩のとこのお子さんが産まれたというラインが来たのだ。
見た瞬間、涙が出てしまった。
ベッドの布団の中で隠れて堪えようと思ったけど、堪え切れなくて、不思議そうに様子を見にきた夫の前で、いっぱい泣かせてもらった。
しばらく涙が止まらなくて、優しくなだめてくれて、落ち着けた。
夫が「泣くときは俺の前でなるべく泣いてね」って言ってくれた。
自分の境遇を誰かと比較しても意味ないし、その先輩には良くしてもらって、わたしにとってはお兄ちゃんみたいな存在だし、お祝いしたかった。
けれど、グループラインでお祝いに沸く中、わたしの気持ちはみんなには伝えられないと思うと、本当は柚子華を自慢したいのに、苦しかった。
それと、ラインが来たとき、
ちょうど柚子華の仏壇がお花とかで華やかで可愛くなって、
お線香も立てて立派な仏壇になって嬉しくなった時と同じタイミングだったから、動揺してしまったんだと思う。
ちゃんとその先輩夫婦への心からのお祝いは、いずれ絶対できるようになると思う。
柚子華のことも、涙を流さずに話せるようになったら明るい声で自慢できるようになりたい。
ううん、絶対なるからね。
私と柚子華の経験は、隠すことじゃないから。
6月12日に産まれてからの3日間は、
柚子華の顔を見たい時に見られて、
幸せな時間だった。
それを忘れない。
これからは、夫のいない時になるべく泣かないようにしよう。
未来を考えていかなきゃ。
ここからは夫とその日の夜の他愛もない会話。
ちょうどサッカーW杯で世の中が沸いてるときだった。
夫は「ゆずは俺に似てふらふらしてるのかなぁ」って言った。
「なんで?」って聞いたら、
「天国三丁目に行って、きっとサッカーのワールドカップを上から眺めてるんだよ」
「でもオリンピックの時には東京だからきっと帰ってくるね」って。
「柚子華はわたし達に似て自由人なのかな」って2人で笑った。
気持ちが少し癒された。
柚子華はきっとすぐ、帰ってくる。
夫から柚子華への手紙にも、
一緒にビールを飲める日を楽しみにしてる、いい女になれよ!って書いてて、
夫は柚子華の大きくなった姿もちゃんと想像してるんだって思ったら、わたしだけが未来をみれてないんだって感じた。
未来をみる。
柚子華は天国にいる。
そして生まれ変わって、また私たち夫婦の元に帰ってくる。